2010年3月8日月曜日

立教大学生の感想

『 立教大学生の感想 』
                      猪熊得郎
一昨年秋、渋谷にあった「戦場体験放映保存の会」の事務所に4人の立教大学
の学生がやってきました。

ゼミの研究課題で、「戦争体験が、その人の人生にどう影響したか」ということ
に取り組むということで、元兵士を紹介してもらいたいということでした。
学生たちが、真面目で、熱心であるので、事務局は、4人の元兵士を紹介する
ことになりました。

学生たちは、分担して元兵士たちからの聞き取りを行い集団討議を繰り返し、
それぞれ研究論文を作り上げたのでした。

そして、昨年9月の「語らずに死ねるか」の日比谷集会には、ボランテイアとし
て、司会補助など集会の成功のための活動に参加をしたのでした。

彼ら、彼女らは、大学を卒業し、4月から新しい人生の出発点に立っています。
その感想文から、「戦場体験を語り継ぐ活動」に参加する一人ひとりが、それぞ
れに、何かを学び取ることが出来たら幸いに思います。


    【戦場体験を語り継ぐ活動に触れ、感じたことや感想等】

Q1ああいう活動に触れた感想
Q2戦争の体験、記憶、知識がなく、学校でも近現代史が学べない若者たちの
  感覚


○ Mさん (A1・A2混合で回答)
まず現在の若者世代も戦争の経験、知識に接する機会は皆無ではないと思い
ます。例えば各メディアからの情報(TVドラマやニュース報道、新聞・雑誌
の戦争特集等)や学校における歴史教育等です。

 若者は受動的にそれらの情報を受け取ることによって「戦争は悲惨だ」、「戦
争は二度と起こしてはならない」といった考えを持つようになります。それ自
体はもちろんいいことだと思いますが、受け取る情報があくまで「表面的な情
報」であり「リアルな体験」ではないため、戦争というテーマを考える際には
「まあとりあえず戦争はいけないことだよね」としか答えることしかできない
のも事実であり、それが一般的な若者の戦争に対する感覚に最も近いものだと
思います。僕もそうでした。

 重要なのは「戦争反対という立場の中で具体的にどのような行動を起こすか」
であると思います。その意味で自分で言うのもおかしいですが、一昨年主体的
に戦場体験をテーマに選択し、戦場体験者の方々への聞き取りを行い、何かし
らの結論を書こうとしたことは貴重な経験だったと思っています(論文の内容
の質とはもちろん別問題ですが)。
 
 また若者の戦争に対する感覚に関してもう一つ重要なのは「なぜ戦争反対な
のかという主張に対して自分で思考する機会を与えうる、リアルな戦争体験に
触れる機会が増えること」だと思います。

 戦場場体験放映保存の会をはじめ、体験者やボランティアの方々が様々な
世代に向けて戦場体験を語り継いでいらっしゃることは、その意味で社会的
に重要なことだと思います。
 
 しかし先日の日比谷公会堂でのイベントに参加させていただいた時も感じた
ことですが、そのような貴重な場に若者の姿がまだまだ少ないことはやはり問
題だと思います。この点に関しては、これまでのような広報に加え、リアルな
体験を先に触れた者たち(私達ももちろん含む)が同世代にその体験から考え
たこと、そのような機会があることを広めていくことが大事だと思います。

 そして重要なこととして先に挙げた二つを総合的に考えると、「リアルな戦
争体験に触れる機会を学校教育と絡めて増やすこと」が理想だと思います(こ
の点に関して具体的な提案をするのは現時点では難しいですが)。

生意気に聞こえてしまったら大変申し訳ないですが、以上が僕の感想です。


○ Sさん
A1…
私にとって、皆さんの活動に触れたことはとても新しい経験でした。

 まず2008年の秋にインタビューをさせていただくまでは、自分の中で論文
の問いに対して「知りたい」「聞いてみたい」という気持ちが大きかったと思
います。しかし実際にお話を伺ったり活動に触れることで、皆さんの「伝えた
い」「後世に残したい」というお気持ちをわずかではあっても一緒に感じるこ
とができたのではないかと感じています。

 また、私たちの書いた論文の先により広い世界が広がっていたこと、それに
関われたことを単純に嬉しく思いました。貴重な体験をさせていただきました。

A2…
私たちの世代が、戦争というものにリアリティを感じることが難しいのは確
かなことだと思います。それは猪熊さんがおっしゃるように私たちには戦争の
体験はもちろん、知識も充分にはありませんし、何といってもこの平和な日本
に生まれ育ったことからきているのだと思います。また猪熊さんのように「本
当の戦争」の話をしてくれる人も身近に少ないということもあり、それ故、戦
争やあるいはそれに関することについて想像力が乏しく「お話」「教科書」の
中の出来事だと感じてしまうのかもしれません。

 ただ、その想像力についてあまりに自然に無関心である若者がいると同時
に、それについて不安を感じている若者も少なくないと私は思ったりしてい
ます。
 猪熊さん、皆さんの活動がそんな若者に伝わればと思います。

○ Aさん
A1…
率直に良かったと思います。普通に生活していたらわからないことってたく
さんあると思いました。

自分たちが今、当たり前に平和に生活できているのは、歴史の中に戦争を繰
り返してきた日本があるからであり、それにより犠牲になってきた、日本の戦
士たちがいることを私たちは忘れてはいけないと感じました。日本人の考え方
やモノ、そして新しい文化などたくさんのことがものすごいスピードで変わり
ゆく今の時代の流れのなかで、今の私たちがある、礎を築いてくださった方々
がいること、そしてその意志をこれから引き継いでいくのは私たち若い世代で
あり、これから先、後世代へも伝えていかなければならないと、感じさせてく
れた 貴重な時間だったと思いました。

A2…
感覚なんてものじたい、そもそもありません。なぜなら体験、記憶、知識が
ないからです。だからこそ戦争経験者の方からのお話を聞くことで、その知識
の部分や情景を聞くことで、初めて現実味を帯びてくるものと私は感じていま
す。


○ Uさん(A1とA2の記述の順番を逆にして記述)
A2…
 私の考えでは、今の若者世代(戦争に直に触れたことのない世代)の大半
が、戦争に対し「戦争は悲惨なものであるし二度と起こしてはいけないもの
である」という認識や考えを持っていると思います。

 しかし、その認識は学校で(戦争を直接知らない)先生から教えられたもの、
主にTVなどのメディアからすり込まれたものだと私は思います。「戦争は悲
惨なものであるし二度と起こしてはいけないものである」という認識や考えを
多くの人が持っていることは確かですが、それは実体験やそこから感じ考え生
み出された認識ではなく、ただ表面的に形成されているだけのものであるので
はないでしょうか。

 私は卒業論文の題材として宗教を取り上げたのですが、その所以は「なん
となく知っているけれどわからない」「自分と地続きにも思えるが、どこか
真実味がない」というもやもやとした想いが大きくあったからです。このよ
うに私が宗教に対して抱いていた思いと同じ思いや感覚を、現代の若者は戦
争に対して抱いていると感じています。
 
 戦争に対し、もっと知りたいし知らなきゃいけないという想いを持つ人は
非常に多くいるのではないでしょうか。しかし、「戦争」というものを、真
実味を持ち、ただ知るということを越えた「経験」や「体験」とできるよう
なツールや環境が無いのだと思います。

ですから、又聞きの情報ではなく、経験当事者から話を聞くと言うことほど
真実味をもって戦争を「知る」「捉える」ことができることは無いと思いま
す。

A1…
 一言で言うと、あのような活動に触れる機会に出会え、本当に良かったな
としみじみと思っています。

 A2でも記述した通り、あれ程までに私たちが日々の生活や今までの人生で
“真実味をもって”感じることの出来ない「戦争」に直接触れることのでき
る経験はなかなかできないと感じています。

 私たちの力量の無さのもとにできあがった拙い報告書ではありましたが、
それであっても私たちが感じたようにもっと多くの若者にインタビューを読
んで欲しいと思いましたし、一度でいいから直接体験者の話を聞く場を皆が
持てたらどんなにいいかとも思いました。
 
 ただ体験を語ってくださること、それだけでも世にとって非常にありがた
い存在だと思います。しかし、語り継ぐ活動に参加されている人々の中でも、
猪熊さんのようにただ語ってくださるだけではなく、「どのようにしたら伝
わるか」「聞き手が理解しやすいようにいかに語るか」と聞く立場のことま
で配慮し尽力してくださる方はなかなかいらっしゃらないでしょう。

 私たちの感想がどの程度お役に立てるかはわかりませんが、猪熊さんの、
そして戦争を語り継ぐ活動をしている方々の参考に少しでもなればと思って
います。
 

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